東北の言葉で捨てることをなげるという。被災した方の背中となげられたものの数々は言葉よりも雄弁に物語る。大槌地区桜木町の川縁の土手には様々なものたちがなげられている。泥にまみれたピアノ・学習机・・・
Mおばあちゃん お元気ですか?「一切合切家具はなげてくれ。それから庭の泥も全部なげてくれ。」「でも、私はここにいなくていいかい。つらくてみてられない。」そう言っておばあちゃんは私たちに背を向けられた。
おじいちゃんの遺影と仏壇。物置にはおむつ。おじいちゃんの介護していたのかもしれない、庭に面した部屋のベッドはおじいちゃんのものだったのだろうか。きっとここから庭をみていたんだろうか。私たちはただ黙って泥を掻き出し、なげつづける。水を含んだ畳と布団は重い。Mおばあちゃんの家で捨てられなかったもの。おじいちゃんの遺影と仏壇。庭から泥を掻き出したら黄水仙が息吹き返した。