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教職員の長時間労働是正シンポジウム in 岩手・盛岡

2017/07/11

写真 教職員、組合員、保護者で埋まった会場

写真 「生きるための仕事をしてください」工藤祥子さん

写真 「働き方改革とともに学び方改革も」寺脇研さん

写真 コーディネーター、パネラーのみなさん

写真 集会アピール「こんな学校だったら」岩教組青年部

岩手県教職員組合、岩手県高等学校教職組合から教職員の長時間労働是正に関するシンポジウム、
「学校での働き方改革を通して教職員と子どものゆたかな教育環境つくりを」
~教職員の超勤・多忙化解消を考えるシンポジウム~
開催報告が届きました。

7月9日、岩教組や岩手高教組は連合岩手とともに、教職員、組合員、保護者などおよそ1,000人の参加のもと、「教職員の超勤・多忙化解消を考えるシンポジウム」を開催しました。
シンポでは、全国過労死等を考える会公務災害担当・神奈川県過労死等を考える家族の会代表である工藤祥子さんが、教員であった配偶者を亡くし5年以上の時間をかけて公務災害認定を得た自らの体験を報告しました。
「夫は、倒れる2週間前には遠足と修学旅行の引率をするなど過酷な状況で明らかに過労状態にありました。倒れた時にはすでに脳死状態と告げられ、その後、子どもたちとともに5日間、夫の看病をしました。皮肉にも久しぶりの家族4人の時間でした。家族4人で大好きなテレビを見ていた時に夫は亡くなりました」と当時をふりかえりました。祥子さん自身も教員という立場から、当然、公務災害が認定されると思っていたところ、学校の労務管理のずさんさが「当然」の証拠とならず、認定までに5年半もの年月を要したことを話しました。そして、「夫は、最後まで教師の仕事が大好きで、子どもたちも大切にしていました。でも、大好きな仕事で子どもたちに自分の死の姿を見せたことを後悔しているはずです。生きるための仕事をしてください」と結びました。

基調講演を行った寺脇研さんは、「教職員の働き方改革は、子どもの学び方改革と一体となって行われなければならない」とし、「学び」の古い概念に疑問を呈しました。「生涯学習」「キャリア教育」「学校5日制」などは、教育の場を家庭や地域に広げるねらいがありましたが、学習時間の概念は固定化されています。「授業の予習復習をする」などは学習時間でも、親子で歴史のドキュメントテレビを見たり博物館に行ったりすることは学習時間とはみなされません。「学びの機会は学校以外にもたくさんあるのに、未だに学校以外の学びが認めらない古い概念に問題がある」と指摘し、教職員の多忙化の問題は文科省と組合がしっかりと議論すべき内容であるが、同時に子どもの学び方についての議論も必要だと述べました。

パネルディスカッションは、地元新聞社の論説副委員長をコーディネーターに中学校教員、高校教員、民間労組役員、県P役員、元中学校校長の6人で行われました。教員から現場での時間外勤務の実態が報告されると、「先生は忙しい」「先生は家族との時間がとれているのか」などの教職員へのイメージや「勝ちたい保護者とそうでもない保護者との板挟みなっている部活動顧問は大変そう」など働く仲間、保護者としての感想が話されました。
会場から、「先生だって残業代をもらっているのでしょう」との意見が出され、改めて「給特法」で月4%が支給されていますが、月8時間相当にしかあたらないものであることを確認しました。
部活動については、
「教職員の長時間労働が部活動に焦点化されていないか。仕事のあり方全体を検討すべきではないか」
「子どもにとっては、部活動がブラック」
「子ども主体の部活動になっていない」
「外部コーチを認めるにしても信用できるコーチなのか不安」
「責任の所在が曖昧とならないか」など、それぞれの立場で意見が出されました。
パネリストからのまとめとして、
「あきらめないで、超勤を減らす意識を持ち努力をすること。教える楽しさ、学ぶ楽しさを学校にとりもどすためにも、学校の実態を広める機会を増やしたい」
「採用試験の受験者数の減少は、教職員の労働環境にも関係あるのではないか。人を救えるのは人しかない。組合の得意分野としての支援が必要」
「必要論で言えば、すべてが必要とされる。そんな中で業務を改善し削減するためには、優先順位をつけることが大切」
「校長が先生を守る!そして、校長が保護者との関係をつくることが大切」
「教育の原点は家庭。保護者として学校の現状を理解し広めていきたい」
などが述べられ、会場から多くの拍手が送られました。

最後に、コーディネーターが「ワークシェアリングの必要性」「教職員定数改善が必要」の意見が会場から寄せられたことを紹介するとともに、自身の取材体験として「多忙な子どもたちの姿」をあげ、教職員の長時間労働との関連性に言及しました。
シンポは、学校現場の実態を共有し、様々な立場の考えを聞く機会となりました。同時に、教職員組合としての責任の重さも強く感じました。引き続き、岩教組、岩手高教組は、「しんどい」思いをしている仲間を支えるとともに、岩手の教職員の切なる声を集め、広め、全国の組合員と連帯して教職員の長時間労働是正にとりくみます。

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