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第72次 教育研究全国集会 開催

2023/01/29

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   第72次教育研究全国集会が1月27日から29日をWeb開催しました。

   今次も新型コロナウイルス感染症防止のため、Webでの開催となりましたが、全国からのべ7,000人が参加 しました。

   1月27日全体集会では、瀧本司中央執行委員長によるあいさつ、山木正博書記長からの基調提案の後、早稲田大学法務研究科 教授 長谷部恭男さんによる記念講演を行いました。

   1月28・29日は24の分科会にわかれ、475本の教育実践リポートをもとに共同研究者とともに討議を深め、最終日には各分科会で総括討論を行い、集会アピールを確認しました。

 

記念講演 長谷部恭男さん「大日本帝国憲法から日本国憲法へ~憲法の過去と将来~」

【大日本国憲法から日本国憲法へ】外国との不平等条約を解消するため、そして近代国家を形成して国の独立を守るため、国民の政治的エネルギーの結集を必要とし、海外の法制を参考にして大日本帝国憲法を制定した。しかし、統帥権が内閣にはなく、軍部大臣現役武官制でもあり、国政の統一がはかられなかったため、ポツダム宣言の受諾に至った。日本国憲法では、国民主権であり天皇は象徴にすぎないこととされ、憲法9条が制定された。

【憲法9条】自衛権は否定していない。国際紛争を解決する手段として、つまり国家間の紛争を「決闘」によって解決するための戦争遂行能力の保持が否定され、決闘として戦争に訴える権利(交戦権)も否定されている。とはいえ、武力の行使を示唆する条文は全く見当たらないため、武力の行使やそのための実力の保持が許されるかと言えば、その出発点はゼロである。武力の行使を認めるには、それを正当化する明確な根拠が必要となる。長年にわたって政府が主張してきたのは、日本が直接武力攻撃を受けた場合に、それに対処するため最小限度で武力を行使する個別的自衛権は、国民の生命、自由、幸福追求の権利を守るために認められるということであった。裏返して言えば、日本と同盟関係にある他国が攻撃されたとしても武力の行使は認められないはずであり、集団的自衛権の行使は憲法違反である。

【9条を存置したまま新たに自衛隊の存在を明記することについて】自衛隊の「現状」は変わらないのであれば、日本の安全保障にプラスにはならない。「現状」を書き込むには「自衛隊」とは何かを憲法にこと細かに書き込むことが必要で、簡潔な現在の憲法の条文からすると、きわめてバランスの悪い条文改正をせざるを得ない。一方、憲法改正が国民投票で否決されると「現状」も否定されるパラドックスがある。日本が攻撃されたら日米安保条約によってアメリカが助けてくれるかと言えば、安保条約は、各締約国の「憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処する」としており、アメリカでは「戦争」と言える規模の軍事行動をするには連邦議会の承認が必要なため、それを口実として、アメリカが日本を助けないことも充分想定される。

【敵基地攻撃能力について】憲法が許容するのは自衛権にとどまり先制攻撃は許されていない。敵基地攻撃能力を持つことで抑止力が高まるとされるが現状でも抑止はされており、想定されている「敵国」にとって日本を武力攻撃するインセンティブはない状態。現状で足りない抑止力とは何かの説明はされていない。想定されている「敵国」には核抑止力があるので核攻撃能力をすべて破壊しない限り、敵基地を攻撃することは日本にとって破滅を意味する。いずれにせよ、安全保障上の合理性について納得のいく説明はない。他にも十分な説明がないまま、国政上の重大な方針変更をする事例が後を絶たない。

【緊急事態条項の新設について】現行憲法下の法制で緊急事態には十分対応できるはずであり、自民党改憲案の緊急事態条項は、発動の要件が曖昧であること、内閣の決定によって法律を制定・改変できるなど効果が強大過ぎあまりにも危険である。

【高等教育の無償化について】予算措置が必要であり、予算措置が整えば改憲は不要。つまり改憲は、高等教育の無償化に関して必要条件でも十分条件でもない。

【参院選挙の合区解消について】都道府県の廃置分合は法律事項であり、投票価値の平等の実現のためには県を合併させることも可能ではある。それを回避するために「現状の都道府県」も憲法に書き込むのか?これも国民投票で否決されると「現状の都道府県」が否定されてしまう。例えば(歳費を減らして)議員の数を増やせばいいのでは?

最後に【憲法とは】日本国憲法は硬性憲法であり普通の法律より改正は難しくなっている。社会の中長期的な基本原則を書き込むことで、短期的な利害調整が行われる日常政治から隔離し安易に手をつけられないようにしてあり、細かな定めは法律以下に委ね、状況の変転や緊急の必要に対応可能としている。“憲法に関する問題も、すべて国会を中心とする通常の民主的政治過程で議論し決着をつければ足りるとみんなが考え始めれば、憲法は死滅する”

第72次教育研究全国集会主催者あいさつ

日教組第72次教育研究全国集会 アピール

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