談話

「こども大綱」の閣議決定にかかわる書記長談話

2023年12月25日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

 こども大綱(以下、大綱)が12月22日、閣議決定された。大綱は、今後自治体が努力義務として定める「こども計画」に反映されることとなっている。大綱ではこども施策に関する基本的な方針として「日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり」と前置きし「こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る」「こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく」等の6本を柱に定めている。しかし、国連子どもの権利委員会から勧告され、既に世界70か国以上で制度化されている「子どもコミッショナー」に触れておらず不十分と言わざるを得ない。また、大綱の推進にかかわる「こども未来戦略」で示す「支援金制度」は、社会全体で子ども・子育てを支える観点から課題がある。

 

 日本の子ども・若者のいのち・人権が脅かされている。いじめの認知件数・不登校児童生徒数、自死数がともに過去最多(文科省 23年)であり、15~34歳の年代における死因の中で最も多いのが自死(厚労省 20年)となっている。そうした中、日本の「家族関係社会支出(対GDP比)」は1.65%(内閣府 21年)で、イギリスやスウェーデン等のヨーロッパ諸国の半分程度にとどまっており、今後、予算の確実な確保と拡充が必要である。同時に、子ども・若者の権利を擁護し代弁するために、国に先駆けて既に30以上の自治体で「子どもコミッショナー」が設置されていることに鑑み、制度を周知するとともに設置を促していくことが求められる。また、5年後のこども基本法の見直しにむけ「子どもコミッショナー」の重要性を社会に広げていくことも課題である。施策の実効性を高め、子ども・若者のいのち・人権が守られる社会を作っていくことを最優先にとりくむべきである。

 

 日本の教育制度について、国連子どもの権利委員会は過去4回にわたり「ストレスの多い学校環境(過度に競争的なシステムを含む)から子どもを解放するための措置を強化すること」等を指摘している。大綱が「子どもの権利条約の精神にのっとる」のであれば、今こそ子ども・若者のウェルビーイングを保障していくために、競い合いから学び合いへ転換することが必要で、こども家庭庁は文科省と連携してすすめるべきである。

 

 日教組は、引き続き社会的対話を推進し、子ども、保護者・地域住民、教育関係者など広範な市民と合意形成をはかり、子どもが権利の主体となり、その権利が保障される社会をめざし、日本国憲法、子どもの権利条約の理念の実現にむけとりくんでいく。

以上

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