談話

「こども家庭庁設置法」および「こども基本法」の成立に関する書記長談話

2022年06月15日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 本日、「こども家庭庁設置法」および「こども基本法」が、参議院本会議においてそれぞれ可決・成立した。「こども家庭庁設置法」では、「(こどもの)最善の利益を優先して考慮することを基本」とし「こどもの権利利益の擁護に関する事務を行う」機関として「こども家庭庁」を設置すること、「こども基本法」では、「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり」「こども施策を総合的に推進する」ことが明記されている。

 

 日教組はこれまで、子どもの権利が保障される社会の実現にむけ、子どもの権利条約を基盤とした「包括的な法律」の制定、子どもについて総合的に取り扱う行政機関の設置、子どもの権利擁護・救済のための独立機関の設置の3つが必要であるとし、連合・子どもの人権連等と連携しながら、国会対策を行ってきた。国連・子どもの権利委員会からも「子どもの権利に関する包括的な法律」の採択や適切な総合的調整機関の設置を繰り返し勧告されており、今回の法制定は、不十分ながら評価できる。
しかし、「こどもコミッショナー」等子どもの権利擁護に対する監視機関の設置が見送られたことや、「こども庁」から「こども家庭庁」に名称が変更されたことにより家庭への支援が、介入に転化される懸念等が残されている。あくまで子どもを権利の主体とし、すべての子どもが「将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現」をめざすべきである。また、教育に関しては文科省が所掌することになり、幼保一元化やいじめ・不登校等子どもの人権に関する事項に関してどこまで具体的な政策が実現できるのか、今後の大きな課題である。

 

 「こども家庭庁設置法」附帯決議には、「こども施策の予算の確実な確保」「こどもの意見の尊重」等が記載され、「こども基本法」附帯決議では「こども施策の一層の推進のために必要な方策については、施行後五年を待つことなく、速やかに検討を加え、必要な措置を講ずる」ことが盛り込まれた。今後、安定財源の確保にむけた附帯決議の確実な履行、独立性が担保されている「子どもの権利擁護のしくみ」としてのコミッショナー等の設置が求められる。また、「児童の権利に関する条約の趣旨や内容等について普及啓発に取り組み、その認知度をモニタリングすること」も含まれている。学校はもとより社会全体に、条約や法を周知していく必要がある。

 

 日教組は、すべての子どもの最善の利益を保障する社会の実現をめざし、関係団体等と連携して国会対策を行う。また、子どもの権利条約の理念を教育分野で実現するため、引き続きとりくみを強化する。

以上

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