談話

安全保障3文書に抗議する書記長談話

2022年12月16日

 

                                     2022年12月16日

                      日本教職員組合書記長 山木 正博

 

 12月16日、岸田政権は、安全保障3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の改定を閣議決定した。これまで専守防衛としてきた日本の安全保障政策を大転換させるにもかかわらず、国会での議論を行わず決定することは容認できない。世論調査でも賛成が30%程度しかなく、政府は説明を尽くしたとは到底いえず、国民の合意は全く得られていない。これを閣議決定で押し通すことは民主主義の理念から大きく逸脱している。

 

 国家防衛戦略では、敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有するとした。敵基地攻撃能力は、相手国が攻撃に着手した段階で認定できるとしているが、その見極めは難しい。判断を誤れば、先制攻撃となり憲法第9条違反だけでなく、国際法にも反する行為となる。たとえ、着手後であっても日本が反撃をすれば、相手国からのさらなる攻撃が当然予想される。今回、三文書の改定にあたり、国民保護の観点は、ほとんど議論されていない。戦争となれば、基地周辺の地域住民等多くの被害がでることはロシアのウクライナ侵攻を見れば明らかである。日本が反撃のための長距離ミサイルを保有すれば、周辺国は警戒し、緊張が高まるだけである。憲法前文にある「国際社会と協調して理想の現実に向かうこと」をめざしていくべきである。

 

さらに防衛力整備計画には、必要経費として5年間で総額43兆円が計上された。政府は防衛費をGDPの2%まで引き上げるとしており、そうなれば、日本は米国、中国に続く世界3位の軍事大国となる。復興特別所得税の一部を防衛費増額の財源として事実上「転用」することになり、道半ばとしている復興を政府は置き去りにしていると言わざるを得ない。現在、長引く感染症の影響から多くの市民が苦しい状況にあり、物価の上昇、少子高齢化、貧困・格差問題、教育や環境問題等多くの課題がある中で、防衛力のみに注力することは、市民の暮らしを蔑ろにしており、断じて許されない。

 

日教組は、憲法前文にある「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」するとした憲法理念を無視するかのような、岸田政権によるこの閣議決定に強く抗議する。そして、「教え子を再び戦場に送るな」の決意のもと、戦争につながる動きを断固阻止し、憲法の理念を護るため、「戦争をさせない1000人委員会」や平和フォーラムと連帯し、すべての組合員の力を結集して全力でたたかう。

 

以上

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