談話

「教育勅語の教材使用を認める」閣議決定に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2017年04月04日

安倍内閣は3月31日、戦前・戦中に道徳や教育の基本方針とされた「教育勅語」について、「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定した。教育勅語は、1948年に、日本国憲法や教育基本法に反するとして、軍人勅諭とともに衆議院で排除に関する決議、参議院で失効確認に関する決議が行われている。今回の閣議決定は、衆・参両院の決議と、憲法に違反する決定である。日本国憲法と教育基本法のもとすすめられてきた戦後民主教育を否定するものであり、断じて容認できない。直ちに撤回すべきである。

「教育勅語」は主権在君の明治憲法下のものであり、親孝行や友だちを大切にする、夫婦仲良くといった徳目が並ぶが、その根底には強固な家父長制度と長子相続性、男尊女卑の考えがあることは間違いない。その核心は国民を天皇に忠実かつ従属的な「臣民」とし、戦争が起きたら国と天皇のために命を捧げよということであり、アジア諸国をはじめとする侵略戦争へと国民を駆り立てる役割を果たした。日本国憲法は、明治憲法下における侵略戦争の時代の反省にもとづき「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」を基本に、主権在民、男女平等、個人主義に立脚している。「教育勅語」が憲法に反しない教材になり得る要素は一切存在しない。
 
安倍内閣は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、憲法と教育基本法による戦後民主主義や平和主義、民主教育を否定してきた。今回の閣議決定は、教育勅語優位の可能性すら疑わせるものである。国家主義的な教育は、国家や「公」なるものに対する個人の犠牲を強要し、それを美化し、個人主義を否定していく。一方的・画一的な価値観を植え付け、多様な個性と多様な価値観を認めない社会へと繋がる。絶対に「教育勅語」を評価することがあってはならない。
 
日教組は「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、今後も安倍政権の教育改革に抗し、平和を守り、真実をつらぬく民主教育の確立にむけ全力でとりくんでいく。

以上

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