談話

国際学習到達度調査(PISA2006)の結果公表に対する書記長談話

2007年12月04日

国際学習到達度調査(PISA2006)の結果公表に対する書記長談話

2007年12月4日

日本教職員組合 書記長 中村 譲

本日、経済協力開発機構(OECD)は、57カ国・地域の15歳児(高校1年生)を対象に昨年実施した学習到達度調査(PISA2006)に関し、科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3分野についての調査結果および分析データを公表した。

11月29日に前倒しして公表された科学的リテラシーに関して、マスコミ各社は、前回調査(PISA2003)に比べ、順位が2位から6位になったことをもって、日本の学力が「後退」「転落」「下落」と報道した。

問題とすべきは、科学的リテラシーが日本より上位の国々は、レベル1未満(社会に出て困難な生活が予想される学力)の層が、フィンランド0.5%、香港1.7%、台湾1.9%と極めて少ないのに対し、日本は3.2%と高い数値となっていることである。

また、日本の子どもたちは、「科学への興味・関心や科学の楽しさを感じている」「観察・実験などを重視した理科の授業を受けていると認識している」の割合が低いというデータが出ている。こうしたことから、学力の底上げや自ら学ぶ意欲が大きな課題と言える。

PISA調査の定義する学力は、知識の量や技能の正確さを測るものではなく、知識や技能を活用するプロセス
を測定するものである。そのために、知識伝達という「詰め込み教育」では、授業時間を増やしたとしても、効果は期待できない。「受験学力」「点数学力」を
目的とするのではなく、子どもたちが自立し、社会に出て生きる力をつけるための「ゆたかな学び」にこそ目を向けなければならない。

日本がめざしているイギリスは、得点、順位とも下げていることに加え、レベル1およびレベル1未満の割合が
高く、今回の調査で見る限り、競争的な教育改革が成功しているとは到底いえない。子どもたち一人ひとりの「ゆたかな学び」を保障するためには、過度の競争
で教職員や子どもに責任を負わせるのでは高まらないことが証明された。

OECDが今年9月に公表した教育予算に関する調査によれば、日本のGDPに占める教育予算の割合は、
OECD諸国の中で下から5番目と最低レベルとなっている。また、1995年以降の10年で、各国の教育費は42%増加しているのに対して、日本の伸びは
11%程度にとどまっている。

教育は未来への先行投資であり、学びの質・子ども一人ひとりの学力保障の点からも30人以下学級の実現や教職員の加配など学校現場を支援する教育条件整備や教育施策こそ最優先すべきである。

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