談話

高等学校学習指導要領の告示に関する書記長談話

2009年03月09日

高等学校学習指導要領の告示に関する書記長談話

2009年3月9日

 日本教職員組合 書記長 岡本泰良

文部科学省は3月9日、10年ぶりに全面改訂となった高等学校学習指導要領を官報に告示した。この間、日本教職員組合は12月末に公表された改訂案へのパブリックコメントのとりくみをおこなってきた。

国語、数学、外国語に共通必修科目を設定したことは、高校生が身につけるべき最低の共通性という考え方では評価できる。しかし、高校教育の共通性は市民教育・主権者教育の観点から職業教育、とりわけ働く者の権利等を共通して学ぶことにある。これは私たちの実践課題でもある。

「義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けること」や「障害のある生徒への配慮」などは現場実態を考慮しているが、一方で「はどめ規定」を原則削除したことにより、理・数を中心に教科書の難易度の差が生じ、高校間格差が拡大することが危惧される。また、週あたりの授業時数(全日制)を標準である30単位時間を超えておこなえるように明文化したことにより、これまで以上に高校間での授業時数競争を助長しかねない。高校教職員定数の改善がなされない中、教職員の疲弊と生徒の過重負担が危惧される。とりわけ授業時数の増加だけでは、今回、重視されている思考力・判断力・表現力の育成と知識技能の習得という異なる学力観のバランスをとることは困難である。“ゆたかな学び”を追求し、各学校において生徒や地域の実態に合った教育課程づくりと「生きる力」を育む「総合的な学習の時間」の充実が必要である。

外国語の充実がうたわれ、標準的な単語数が1,300語から1,800語に増加し、授業は英語で指導することが基本とされた。学習指導要領は大綱的な基準とされながら、教授方法にまで立ち入って規制するのは、多様な生徒・学校が存在する中ではあまりに細かい規定であり、学校現場の実態に則したものとはいえない。教員の研修・採用も含めた条件整備も必要である。

道徳教育の充実として、「学校の教育活動全体を通じて行なう道徳教育について、その全体計画を作成すること」と規定されたが、規範的なものに偏ると教科・科目の目標が損なわれるおそれがある。

今後、高校指導要領改訂に対して、高校カリキュラム改革研究委員会最終報告を作成し、労働教育をはじめ主権者教育の具体化について提起する。

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