談話

特別支援学校学習指導要領告示に対する書記長談話

2009年03月10日

特別支援学校学習指導要領告示に対する書記長談話

2009年3月9日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

文部科学省は、特別支援学校学習指導要領を告示した。主な改善事項は「障害の重度・重複化、多様化への対応」「一人一人に応じた指導の充実」「自立と社会参加に向けた職業教育の充実」「交流及び共同学習の推進」としているが、「障害による学習上・生活上の困難を改善・克服」が依然強調されている。医学的基準で対象者を限定する「医学モデル」から、社会や環境との相互関係で定義する「社会モデル」へと、障害の定義や「障害観」の転換が必要である。障害の「改善・克服」を子どもの努力だけに求めるのではなく、「共に生きる社会の一員」としての視点が必要である。

「障害の重度・重複化、多様化への対応」で、「自立活動」に「他者とのかかわりの基礎に関することを」を規定し、「人間関係の形成」が設けられたことは評価できる。しかし、これらは人と人との関わり中で育まれるゆたかな学びであり、「交流及び共同学習の推進」によって、特別支援学校と居住地校との充実した交流が前提とされなければならない。居住地校交流の充実がはかられる条件整備が必要である。

「一人一人に応じた指導の充実」として、「個別の教育支援計画」の作成が義務づけられた。作成すること自体が目的となり、子どもの人権が脅かされることが危惧される。作成にあたっては、「子どもの立場にたち、子ども、保護者とともに作成することを基本とする」等、学びの主体である子どもと保護者の権利が大切にされなければならない。また、「共生社会」をめざす理念にたち、「将来の地域生活の場面での地域の人との関わり」や「地域の人々や障害当事者団体や福祉機関との関わりを深める等、地域社会への参加を視野に入れる」ことについても考慮に入れた作成が必要である。また、「個別の教育支援計画」を作成すること以上に、それをもとにした子どもとの関わりに重点が置かれるように体制を整えていく必要がある。

「自立と社会参加に向けた職業教育の充実」として、高等部の専門教科として「福祉」が新設された。就労のみならず、継続して働くことができるよう、関係機関や就労先との「連携」も課題として扱われなければならない。さらに、就労に特化した進路指導だけではなく、地域の中で孤立した生き方や存在を否定されることのない社会の確立とそれに基づく進路指導が行えるように条件整備が必要である。「職業教育」として、障害のある人たちとともに働く環境や権利についての内容や「交流および共同学習」を実施するための条件整備は、すべての校種で扱われなければならない。

 

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