談話
高校授業料実質無償化法案の成立にあたっての書記長談話
高校授業料実質無償化法案の成立にあたっての書記長談話
2010年4月1日
日本教職員組合書記長 岡本 泰良
高校授業料実質無償化法案は3月31日、参議院本会議で賛成多数(152対76)で可決成立した。野党時代に民主党が議員立法として参議院に提出し、参議院段階では成立をみたものの衆議院の数の前に実現できなかったものであった。マニフェストに掲げて総選挙をたたかい、鳩山内閣提案の法律として実現したものである。まさに、政権交代の象徴といえる。
法案は、中学生の98%が高校等に進学していることからも、家計の負担を少なくするため公立高校の授業料を不徴収とし、その他の私立高校等においては同等額の就学支援金(生活困窮世帯には、1.5~2倍)を支給することで、学費の軽減をはかるというものである。日本教職員組合はこの間、文科大臣ヒアリング等をとおして支給方法・支給対象・年齢制限等の諸課題の解決、制度の円滑な実施に向けてとりくんできた。
本日より県立や市立の高校では授業料を払う必要はなくなり、授業料を払えないために、卒業できなくなるという事態も解消される。高校生の学びを社会全体で支える仕組みがスタートすることになったのである。無償化は終戦直後にも構想されたし、日本教職員組合も高校進学希望者の増加に対して1959年高知大会で「高校全入運動」を提起し、70年代には高校準義務化を提起してきた歴史がある。この60有余年を通じて実現できなかったものが、新政権のもとではじめて実現したのであり、運動の一つの大きな帰結でもある。
政府は同法案の成立をうけ、懸案の国際人権A規約「中等教育の漸進的無償化」条項(13条2のb)の批准留保を撤回する方針である。これにより日本とマダガスカルだけになっていた不名誉な地位を脱することになり、国際的潮流からも評価できる。すべての意思ある子どもがその経済力に関係なく後期中等教育をうける権利の保障にむけての前進である。
日本教職員組合は今後、朝鮮学校の生徒を支援金の支給対象とする課題、給付型奨学金の創設、公私間格差の是正、私費負担の軽減、さらに定員内不合格を出さないとりくみなどすべての子どもに後期中等教育を保障するため、引き続き課題解決をはかり高校実質無償化制度のさらなる深化につとめる。