談話

地教行法「改正」に対する書記長談話

2014年06月13日

地教行法「改正」に対する書記長談話

 2014年6月13日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、参議院本会議において、教育委員会制度を見直すための「改正」地教行法が成立した。

改正内容は、教育委員会制度を存続するものの、総合教育会議と直接任命する教育長を通じて首長の教育への関与を大幅に強めるものであり、教育の政治的中立性、継続性・安定性の確保が損なわれることが強く懸念される。

総合教育会議において、「大綱」の策定と「重点的に講ずべき施策」、「緊急の場合に講ずべき措置」について協議・調整することとなっている。国会審議において「総合教育会議で、協議し調整する事項は、教育委員会の権限に属する事務のうち、予算の調製、執行や条例提案などの首長の権限と調和を図ることが必要なものに限られている」との答弁があった。これは、改正法において、現行の首長と教育委員会の権限関係を変更していないことから当然である。

一方で、総合教育会議において、教育委員会と調整がつかない事項を、首長判断で大綱に記載することを可能としている。総合教育会議は、首長と教育委員会という執行機関同士が対等に協議・調整する場である。それにも拘らず、首長が主宰だからとして、教育委員会と調整がつかなかった事項についても、大綱に首長が書き込めることを可能としていることは、極めて問題である。その事項は、権限を持つ教育委員会が執行する意図がないものであることから、「大綱として明記するものは、調整できたものに限定する」とする方が道理である。

また、首長の権限でない事項について、調整の対象とはならないものの自由な意見交換として協議することは可能であるとしている。「自由な意見交換」として、首長が自分の意向を強要することが懸念される。

今回の「改正」は、いじめ問題の対応において「教育委員会は機能していない」等との指摘が発端である。しかし、教育長以下の事務局が合議体である教育委員会に対して迅速に情報を上げていなかったのが内実である。教育委員会制度は、教育への不当な支配・介入を禁じ、教育の自主性・自律性を確保するために設けられたものである。仮に機能していないとしても、制度自体ではなく運用の問題である。現行制度を維持した上で活性化させる手立てを講じるべきである。「改正」が必要であるとするそもそもの立法事実があるのかについて、十分な検証がされたとは言えない。

国会審議で「偏った主義主張に基づく教育の推進については、総合教育会議の協議題として取り上げることは、政治的中立性の観点から不適切である」との答弁があった。「大綱内容」「協議・調整の対象事項」に、首長による政治介入と自治体間の格差が起きないよう注視するとともに、教育行政に意見反映していく。

pagetop