談話

「被爆二世」訴訟の長崎・広島地裁判決に対する書記長談話

2023年02月08日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

 広島や長崎で被爆した人を親に持つ「被爆二世」が、被爆援護法によって援護を受ける権利が憲法にもとづいて守られるよう立法措置を講じるべきだとして、国に対して損害賠償を求めた訴訟について、長崎地裁(天川博義裁判長)、広島地裁(森実将人裁判長)はともに、被爆二世に対する立法不作為が憲法に違反するとは認められないとした。この判決は、様々な癌等の疾病に苦しみ、健康に不安を覚える日々を過ごしてきている多くの被爆二世の思いを踏みにじるものであり到底容認できない。

 

 裁判において、国は「被爆二世に対し、放射線被害があるという科学的根拠は示されていない」との主張を一貫して続けた。しかし、長崎地裁は判決で「原爆放射線による遺伝的影響については、未だ知見が確立しておらず、その可能性を否定できないというにとどまる」としており、両地裁ともに遺伝的影響について否定をしていない。21年7月の広島の「黒い雨」訴訟では、被爆者を「原子力爆弾の影響を受けるような事情の下にあった者」とし、健康への被害が完全に証明されなくても、可能性の有無により手帳等を交付すべきとしており、遺伝的影響により健康への被害の可能性がある被爆二世についても援護法を適用すべきである。

   これまで原爆放射線が人間に遺伝的影響を与えるかどうか、多くの研究者が戦後10年を経過しない1950年代から動物実験等により科学的根拠を明らかにしようとしてきている。現在でも人間の遺伝的影響については評価が分かれており、はっきりとした結論が出されていない。国は、被爆者については人数を把握し、健康への被害等について調査をしているが、被爆二世については人数を把握もせず、詳しく健康への被害について調査を行っているとは言えない。被爆者援護法の理念である、「被爆者に対して広く健康診断を実施し、健康被害を生ずるおそれに対する不安を一掃させること」をめざすべきであり、被爆二世に対する援護についてこれまでの態度を根本的に改めるべきである。

 

 日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、原水禁ともに運動をすすめてきた。今後も健康不安や差別にも苦しんできた被爆者や被爆二世の思いを受け止めるとともに、「非人道的兵器である核兵器の廃絶」という人類共通の目標実現のため、国際社会の一致した行動を求めて幅広い世論喚起等に引き続きとりくんでいく。

 

                                   以上

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