談話

教育振興基本計画の閣議決定にかかわる書記長談話

2023年06月19日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

 教育振興基本計画(以下、基本計画)が、6月16日、閣議決定された。「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」の2つを柱とし、学び続ける人材の育成、共生社会の実現に向けた教育の推進、教育DXの推進等、5つの基本方針があげられている。また、それらを具現化させるためとして、確かな学力の育成、グローバル社会における人材育成、指導体制・ICT環境の整備等、16の教育政策目標が盛り込まれ、124項目の達成指標が示されている。

 

 日本の子どもがおかれた状況は、子どもの幸福度ランキング(ユニセフ 20年)において「精神的な幸福度」が38か国中37位、「いじめ」の認知件数・不登校児童生徒数は共に過去最多になっている(文科省 22年)。基本計画では不登校特例校設置の必要性等を訴えているが、今必要なのは、国連子どもの権利委員会から過去4回にわたり指摘されている「教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的及び精神的健康に悪影響が生じている」状態をただちに是正し、競い合いから学び合いに転換し、子どもたちのゆたかな学びを保障していくことである。また、「子どもの最善の利益」を保障していくためには、ウェルビーイングの定義を、世界保健機関(WHO)が提唱する「すべてが満たされた状態」とする原点に戻した上で、子ども一人ひとりの人権に配慮した施策を講じることが不可欠である。

 一方、学校現場では、教職員の長時間労働是正もすすんでおらず、精神疾患による病気休職者数は過去最多(文科省 22年)となり、教職員不足も常態化するなど深刻さが増している。教職員が子どもとむき合う時間の確保がままならないばかりか、学校そのものが持続可能となっていない。めざすべきは、学校現場が実感できる働き方改革を早急かつ着実にすすめることであり、そのためには定数改善や業務削減等が必要で、裏付けとなる公財政教育支出の増加は欠かせない。このような環境整備を国が責任をもって行うことが、基本計画がうたう「子供たちのウェルビーイングを高めるためには、教師のウェルビーイングを確保すること」につながる。

 

 日本教職員組合は、引き続き社会的対話を推進し、子ども、保護者・地域住民、教育関係者など広範な市民と合意形成をはかり、子どもたちのゆたかな学びが保障される社会をめざし、日本国憲法、子どもの権利条約の理念の実現にむけとりくんでいく。

 

以上

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