談話

2023年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

2023年08月01日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

  7月31日、文科省は、2023年度「全国学力・学習状況調査」(以下、全国学力調査) (4月18日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。子ども・学校・地域の様々な実態を抜きにした「都道府県別の平均正答数・正答率」が公表され、地方新聞等で順位の変動が大きく扱われることにより、競争・序列化に拍車がかかることが懸念される。国連子どもの権利委員会からも「ストレスの多い学校環境から解放するための措置の強化」が再三にわたり勧告されている。公表に際しては「序列化や過度な競争が生じないようにする」とした文科省通知(22年7月)を踏まえることが必要である。

 

 今年度の全国学力調査では、4年ぶりに英語「話すこと」調査が行われた。全国で約13%の子どもにネットワークトラブル等が生じ、回答に何らかの支障をきたしたことが文科省調査で明らかになっている。現場からは「事前の準備にかかる時間が膨大で、多忙化に拍車をかけている」という声や、任意とはいえ自校採点を行うよう教育委員会から通知があったという報告もある。事前対策が常態化している学校現場の状況もある。

 

  文科省は全国学力調査のCBT化をすすめており、24年度から児童生徒質問紙調査についてはオンラインによる回答方式を全面導入するとしている。また、本体調査についても順次CBT化をすすめていくとしている。CBT化については、個人情報保護の観点や、ネットワーク環境、技術面から教職員へのサポート等、課題が山積している。

 

  6月に閣議決定された教育振興基本計画では、悉皆での実施が明記され、「全国学力・学習状況調査の結果を分析し、具体的な教育指導の改善に活用した学校の割合の増加」が指標とされている。全国学力調査は、毎年参加及び協力の意向確認のもと行われており、参加を前提とした指標策定ともとられかねない。学校現場では、子どものつまずきを、日々の学習活動の中で把握し、一人ひとりに丁寧に対応しながら学びの改善にとりくんでいる。「学力向上」の名のもと、子どもや教職員を追い込むことがあってはならない。

 

  日教組は引き続き、悉皆調査を廃止し、同一日・同一問題でない方法等、調査の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びを保障するための教育条件整備を強く求める。

以上

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