談話

東京朝鮮中高級学校「無償化」裁判の東京高裁判決に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2018年11月02日

 10月30日、東京朝鮮中高級学校高等部の卒業生が提訴した「無償化」裁判の控訴審判決が、東京高等裁判所で言い渡された。朝鮮学校「無償化」除外は適法とした東京地裁判決を支持し、卒業生側の控訴を棄却する極めて不当な判決である。

 阿部潤裁判長は、「下村博文文部科学相(当時)の『不指定処分』判断に裁量権の逸脱、乱用があったとは認められない」とした。裁判長は、2017年9月13日の東京地裁判決を踏襲し、日本朝鮮人総連合会が朝鮮学校の教育内容や人事などに影響を及ぼしている疑いがあるとの理由から「学校運営が適正か十分な確証を得られず、指定対象として認められない」とした処分について「就学支援金が確実に授業料に充てられるか十分な確証が得られず、学校運営が法令に従った適正なものであるか疑いが生じる状況にあった」と指摘し、「不合理とは言えない」とした。また、処分に至る経緯について「国の説明には、やや一貫性を欠く点がなくはない」としながらも、文部科学相の判断に裁量権を認め、「政治的・外交的理由に基づく処分とは言えない」とした。さらに、国家賠償、指定処分取り消し、指定義務づけなど、原告側の請求をすべて却下し、国側の主張を追認する不当な判決を行った。

 日教組は、今回の東京高裁判決に強く抗議する。東京高裁判決は、9月27日の大阪朝鮮学園が大阪高裁に起こした同様の訴訟での判決を追随する不当な内容で、断じて容認できない。朝鮮学校の子どもたちは、日本で民族教育を学ぶ権利が保障されなければならない。また、政治的理由で子どもたちを差別・分断することは決して許されるものではない。さらに「支援金が適正に管理されない可能性がある」とした国の主張は、それ自体が偏見と差別によるものである。その主張を司法が無批判に受け入れたことは、社会的な正義を守るべき司法の判断とは、到底言えない。

 国連社会権規約委員会、国連人種差別撤廃委員会、国連人権委員会等は、日本政府に対し、再三にわたって勧告を行い、高校無償化制度から朝鮮学校のみを除外していることは差別であり、制度を朝鮮学校にも適用することを求めている。このような国際的な見解をもふまえ、司法は判断を行うべきである。

 日教組は引き続き、すべての子どもに教育の機会を保障するために、平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。

                                              以上

pagetop