談話

泊原発運転差し止め判決に対する書記長談話

2022年06月02日

                                                                2022年6月2日
日本教職員組合書記長 山木 正博

 5月31日、札幌地裁(谷口哲也裁判長)は北海道電力(以下北電)に対し、泊原発1号機から3号機までの運転差し止めを命じる判決を言い渡した。提訴から10年以上経過していることから「これ以上審理を続けることを正当化するのは難しい」として結審したことは、泊原発の周辺住民の不安に寄り添った極めて妥当な判決である。

原告は、「津波対策のための防潮堤は、地震による地盤の液状化現象により支持地盤が沈下する可能性があり、泊原発には基準で定められた津波防護壁がない」と主張していた。判決では、「北電側の液状化する可能性は低いとする主張には相当の資料の裏付けがなく不十分である」と厳しく批判し、「津波防護機能を保持する施設は存在していない」と断定し、津波への安全基準を満たしておらず、周辺住民の人格権を侵害する恐れがあるとした。津波対策を理由に運転差し止めを認めた初の判決である。

泊原発は、東日本大震災・東電第一原発事故後策定された新規制基準をクリアさせるため12年から1~3号機全てを停止させたままとなっている。泊原発の再稼働にむけ、原子力規制委員会(以下規制委)は泊原発の真下を通っている断層が活断層でないことを証明するデータの提出を求めているが、北電側は十分な資料の提出をしておらず、「長期化の原因は北電の態勢、姿勢にある」と規制委も批判している。

1993年の北海道南西沖地震(M7.8)によって30mの津波が奥尻島を襲っており、泊原発は危険な場所に設置されているともいえ、万が一原発事故がおきた際、周辺住民が避難する当丸峠は吹雪や積雪で通行止めになり、国道は地震の落石等で使用できない可能性もある。北海道は原発が停止している10年間、泊原発なしでも電力供給は続けられた。さらに北海道は雪氷冷熱、バイオマス、地熱、風力、太陽光等は全国の20%以上を占める再生可能エネルギーの宝庫でもある。北電は控訴せず、泊原発の再稼働を断念し、再生可能エネルギーへ移行するべきである。

    ひとたび事故がおきれば、人々の生活や人権、命をも奪ってしまう原子力エネルギー政策から脱し、自然エネルギー政策に転換することが重要である。日教組は、「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現とすべての原発の再稼働阻止をめざし、今後とも原水禁・平和フォーラムとともにとりくみを強化していく。

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