談話
2014年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話
2014年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話
2014年8月25日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
本日、文科省は、2014年度「全国学力・学習状況調査」(4月22日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。
文科省は、平均正答率が低い3都道府県の平均と全国平均との差が縮小傾向にあることを示し、「学力の底上げが進展」しているとしている。また、教科に関する調査結果においては、「課題の所在がより明確になったものがある」としている。正答率の格差縮小については昨年度も同様の傾向が報告されている。明確になったとされている課題についても、日々の授業の中で学校現場ではすでに認識されているものであり、調査を毎年悉皆で行う必然性は見出せない。調査のあり方を抜本的に見直す必要がある。
「児童生徒の学習・生活習慣と学力との関係」として、平均正答率の高さとの関連がみられる子どもの生活習慣等を挙げているが、子どもが置かれている状況は様々であり、学力を向上させるために行動等の枠組みを示すだけでは、子どもの学習意欲を引き出すことにはつながらない。教育現場からは、調査にむけた過剰な事前対策や膨大な量の練習問題が、かえって意欲の低下を招いているとの報告がある。子どもが主体的に学ぶための学習環境の整備や教育支援が喫緊の課題である。
「学校における指導等と学力等との関係」として、学力と関連がある指導方法等を列挙しているが、現状ではさらなる責任や負担を強いるだけである。OECD国際教員指導環境調査(TALIS 2013)には、日本の教員の勤務時間が参加国中最長で、子どもと向き合う時間や十分な教材研究を行う時間を十分確保できず、子どもの主体的学びを引き出すことに対して自己効力感が低いとの調査結果が公表されている。今必要なのは、少人数教育の拡充や教職員の加配など、教育条件の整備である。
日本教職員組合は、点数や順位に振り回されることなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなど、子どもが主体となる学びが重要であると考える。本年度より結果公表が可能となったが、マスコミ報道によれば、序列化や過度の競争を招くことへの危惧から、多くの自治体が公表を行わない意向を示している。各自治体には、結果公表による「点数学力」の向上ではなく、子どものゆたかな学びの保障につながる地域・学校の課題に応じた教育支援を強く求める。