談話
「福島原発訴訟東京高裁判決」に対する書記長談話
1月21日、東京高裁(足立哲裁判長)は、東京電力福島第一原発事故によって被災した群馬県等に避難した91人が国および東京電力に対して損害賠償を求めた訴訟で、国と東電の責任を認めた一審前橋地裁の判決を覆し、国の責任を認めない判決を下した。
判決は、政府の地震調査研究推進本部が公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」の合理性について検討した結果、評価に用いた「約400年間に3回の津波地震の発生」について「異論がある」と指摘した。その上で、東電の試算根拠となった土木学会の津波の想定とも異なることから、国は長期評価から津波は予見できなかったと判断した。また、東電が長期評価に基づき防潮堤等の対策をしても事故は防げず、「国の対応に問題があったと認めるのは難しい」とし、「東電に規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠いたものではなかった」として国の責任を認めなかった。
国と東京電力を被告とした高裁判決は、20年9月の仙台高裁に続いて2件目となる。仙台高裁では長期評価によって国や東電は10メートルを超える津波を予見でき、原子力規制委員会(以下規制委)は東電に対して防潮堤等の対策を講じさせる役割があったとし、国と東電ともに責任があるとした。長期評価は政府の責任においてなされたものであり、科学的知見に基づいて大規模な津波地震が発生する一定程度の可能性があることを示している以上、国がそれを考慮しなければならないことは当然のことである。しかし東京高裁は、東電が「土木学会」刊行の「原子力発電所の津波評価技術」における予測を用いたことを持ち出し、国は津波を予見できなかったとした。これは国の責任回避ありきの判決であり、断じて容認できない。国や規制委がその役割を怠ったことは明らかであり、東京高裁は公正な司法判断にもとづき、国に対し、東電福島第一原発事故への反省を促すべきである。
54年に原子力研究開発予算が国会に提出され、翌55年に原子力基本法が成立し、国策として原子力発電はすすめられてきた。また、日本の原発は世界で最も厳しい安全基準で審査しているとし、地域住民を納得させ、建設や再稼働をさせてきた。その国が原発事故に対して責任がないとする判決は認められない。避難を余儀なくされた周辺住民に対し、国は損害賠償、生活再建にむけてきちんと結論を出し、脱原発を追求しなければならない。
日教組は「核と人類は共存できない」との立場から、経済よりも人命を優先する脱原発社会の実現とすべての原発の再稼働阻止をめざし、今後とも原水禁・平和フォーラムとともにとりくみを強化していく。
以上