談話
朝鮮学校への高校授業料無償化適用審査の再開指示に対する書記長談話
朝鮮学校への高校授業料無償化適用審査の再開指示に対する書記長談話
2011年8月30日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
8月29日、菅首相は首相官邸で髙木文科大臣と会談し、昨年11月の朝鮮半島での砲撃事件を受け中断していた朝鮮学校への高校授業料無償化適用審査について再開を指示した。
10年4月に高校授業料実質無償化はスタートしたが、朝鮮学校への適用は先送りにされ、検討会議で定めた基準で適否が判断されることになっていた。基準は無償化の対象となっている専修学校をめやすとしており、朝鮮学校はいずれも基準を満たす可能性が高く無償化の対象となるものである。しかし、官邸から無償化制度適用プロセスの停止方針が出され、申請は受理するが現状では審査は行わないという状況が続いていた。
日本教職員組合はこの間、外交問題などを理由に朝鮮学校の子どもを無償化の対象から除外することはすべての子どもに教育の機会を保障した国際人権A規約(13条の1)や憲法26条、教育基本法に照らしても問題であるとして、全単組で総理大臣・文科大臣への要請打電などにとりくんできた。
高等学校等就学支援金は高校などで学ぶ生徒に対する支給であり、あくまで学校は代理受給するもので、本来どこで学ぶかによって支給の可否が問われるべきものではない。10校、700人の朝鮮学校3年生の生徒たちが、支給を待ち望みながら今年3月に卒業していった。制度の趣旨から外れているというだけでなく、まさに人権問題である。この間、朝鮮学校に通う子どもたちが言われもない中傷や暴力的な行為にさらされたことも忘れてはならない。
10年6月の国連「子どもの権利委員会」における日本の報告の審査の最終見解でも「中華学校、韓国・朝鮮人学校及びその他の出身の児童のための学校が不十分な補助金しか受けていないこと」に懸念が表明され、「外国人学校に対する補助金を増額すること」「ユネスコの教育における差別待遇の防止に関する条約への締結の検討」を促している。朝鮮学校を無償化の対象外とすることは、国際社会の人権に関する通念と全くかけ離れているものである。
このたびの首相官邸の判断は、遅きに失するがきわめて当然のことであり、率直に評価したい。今後、適用の審査が開始され、朝鮮学校の生徒にも制度が及んでいくことになると思われる。ただし、財源上の理由から昨年度の700人の卒業生を含む1,800人の生徒に遡及して支給するかについては明言されていない。日本教職員組合は、速やかに審査を終了し支給を開始することを求めるとともに、政治・外交の影響で左右されることなく、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するとりくみをすすめていく。