談話

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に係る書記長談話

2013年06月20日

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に係る書記長談話

2013年6月20日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

6月19日、国会で「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が全会一致で可決成立した。

子どもの相対的貧困率は、2009年時点で日本は15.7%、7人に1人が貧困状態にある。年収が少ない家庭ほど大学進学率が低くなっていること、働きながら定時制・通信制高校に学ぶ生徒の厳しい生活実態などが報告されている。義務教育段階においても、家計の状況から修学旅行に参加できない子どももいる。このように、経済格差の拡大が教育にも影響がおよんでいる。

法律の目的は、「子どもの将来が、生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、対策を総合的に推進すること」としている。民主党の法案にあった、貧困率の具体的な改善目標の明記が見送られたことは残念であるが、格差社会が進行している中にあって、法制定によって、教育の機会均等のための具体的施策が今後実現されるものと期待したい。

成立した法第8条で、貧困対策に関する大綱として、教育の支援、生活の支援、保護者への就労支援、経済的支援などについて定めるとしている。現在、政府において、高校授業料の無償化に所得制限を導入することが検討されているが、国際人権規約に則って、家計の所得にかかわらず社会全体で子どもの学びを保障するための現行高校授業料無償化を堅持すべきである。その上で、授業料以外の私費負担が多額になっていることから、給付型奨学金制度の創設が必要である。また、「三位一体改革」において就学援助の補助金が廃止され一般財源化されている。その影響もあり、所得要件や援助費目について自治体間でバラツキが見られる。今回の法律制定を機会に、就学援助を自治体に任せるのではなく、補助金を確保し、所得要件緩和と援助費目・金額を拡充すべきである。特別支援学校・学級・普通学級の就学奨励費、定時制・通信制高校の教育振興奨励費なども拡充する必要がある。一方で、貧困の改善のためには、生活支援と保護者への就労支援の強化が不可欠である。

子どもの貧困対策が基本理念だけに留まることのないよう、具体的・実効ある施策の実現を求める。

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