談話

集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議する書記長談話

2014年07月02日

集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議する書記長談話

 2014年7月2日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

7月1日、安倍政権は、自民党、公明党の合意にもとづき集団的自衛権の行使にむけた憲法解釈を変更する閣議決定を強行した。

今回の閣議決定は、日本への攻撃がなくても「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」によって「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に、「他に適当な手段がない」とき「必要最小限度の実力を行使」できる、いわゆる集団的自衛権の行使を容認するものであり、歴代内閣が30年以上にわたり「憲法上許されない」としてきた憲法解釈を変更するものである。

安倍首相は、従来の見解の基本的論理は今後も維持するとし、さらに行使は極めて限定的であるとしているが、詭弁である。問題の本質は、自国が攻撃を受けた場合に限定することなく、武力の行使を可能とする根本的な原則の転換にある。政府は、今まで「専守防衛」に徹し自衛隊を「自衛のための最小限度の実力」として、9条2項に違反しないものとしてきたが、その自らの理屈すら破綻させることになる。今回の閣議決定は、明らかな憲法9条違反である。

さらに、戦争放棄を定めた憲法の根幹に関わる変更を、一内閣が閣議決定による憲法解釈の変更で行うことは、憲法99条が求める憲法尊重擁護義務に反し、立憲主義を根底から覆すものである。また、「安全保障法制整備に関する与党協議会」など、国民不在の密室で行われた議論をもとに閣議決定のみで憲法解釈を変更することは、行政権を優越することにより三権分立と議会制民主主義の根幹を破壊するものであり、国会と主権者である国民を蔑ろにするものと断ぜざるを得ない。

直近の世論調査でも、集団的自衛権の行使の方針に対して「反対」が「賛成」を大きく上回っている。また、政府・与党の説明を「不十分」としたのは約8割であり、安倍政権の暴走ぶりが明らかになっている。さらに集団的自衛権行使容認の閣議決定に対し、反対、慎重な対応を求める意見書が190の地方議会で可決されている(6月28日現在)。安倍首相が嘯く「積極的平和主義」は、軍事力を強化し、「抑止力」の名の下に軍事同盟を強固なものとすることによって「平和」を達成しようという考えである。安倍首相が、自らの信念のみに固執し国民を欺き、その多くの批判の声を無視して憲法を蹂躙することは断じて容認できない。

集団的自衛権を行使することは、戦争をするために海外の戦闘地域に自衛隊を派遣することである。派遣された自衛隊が、外国からの攻撃の対象になり、多数の戦争犠牲者が出ることは、過去のイラク戦争やアフガン戦争で集団的自衛権を行使して参戦したヨーロッパ各国の状況からも明らかである。戦後69年間、日本国憲法によって戦争犠牲者を出すことはなく、諸外国との友好関係を結ぶこともできていた。しかし、集団的自衛権の行使が容認されれば、日本が外国の戦争に参加し、その結果、国民が再び戦争によって大変な惨害をこうむることになる。

日本教職員組合は、安倍政権の蛮行に満身の怒りをもって抗議する。

今後、憲法9条違反の閣議決定の撤回を求めるとともに、平和フォーラムや戦争をさせない1000人委員会等と連携し、臨時国会における自衛隊法など関連法案の「改正」阻止のたたかいをより広範に展開する。そして、「教え子を再び戦場に送るな」の決意のもと、憲法の理念を守り戦争をさせないため、暴挙をくりかえす安倍自民党の政権交代を求めていく。

以 上

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