談話

中教審「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」に対する書記長談話

2014年10月22日

中教審「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」に対する書記長談話

 2014年10月21日

 日本教職員組合 書記長 岡本 泰良

本日、中央教育審議会は、道徳を「特別な教科」に位置づけ、検定教科書の使用や記述式の評価を明示した「答申」を行った。これをうけ文部科学省は、今年度中に学校教育法施行規則の一部改正と学習指導要領の一部改訂を行うとしている。

答申では、検定教科書を導入するために、学習指導要領の記述を具体的にするとしている。検定教科書の使用は、規定された価値観や規範意識の押しつけにつながることが危惧される。現在それぞれの地域や子どもの実態に即して使われている副教材等が、十分に活用できなくなる懸念も生じる。

評価については、文章で記述するための記録欄を指導要録に設けるとした。評価の導入により、子ども一人ひとりの価値観や心情の良し悪しを規定することになる。子どもの思い・心情はたとえ記述式であったとしても一定の基準等によって評価できるものではない。思想・信条の自由や精神的な自由を保障する子どもの権利の観点からも、道徳教育に評価はなじまない。

中教審では、現在の道徳に関する検証やこれまで中教審等で道徳の教科化が見送られてきた経緯についての十分な議論もなく、教科化に批判的なパブリックコメントの意見は反映されていない。学習指導要領全体の改訂に向けた中教審での議論に先立ち、道徳の教科化をすすめることは拙速と言わざるを得ない。

教育再生実行会議は、いじめ問題等への対応として道徳の教科化や充実を提言したが、いじめを個人の「心の問題」としてとらえ、一定の価値観や規範意識の押しつけ、いじめた側への厳罰化では、根本的な解決にはつながらない。16.3%という子どもの貧困率や虐待、不登校の問題など、子どもたちをとりまく状況は大変厳しいものとなっている。子ども一人ひとりの実態や背景を見つめ、子どもに寄り添った人権教育が重要である。

日本教職員組合は、これからも平和・人権・環境・共生を尊重する社会の実現をめざし、現場からの教育改革をすすめていく。

pagetop