談話
「公設民営学校」導入に係る国家戦略特別区域法の一部を「改正」する法律案の閣議決定に関する書記長談話
「公設民営学校」導入に係る国家戦略特別区域法の一部を「改正」する法律案の閣議決定に関する書記長談話
2014年10月31日
日本教職員組合 書記長 岡本 泰良
本日政府は、国家戦略特別区域法の一部を「改正」する法律案を閣議決定した。公立学校の管理運営を民間に委託する公設民営学校が、国家戦略特別区域に認定された自治体において可能となる。
公設民営学校の対象は、「中高一貫の併設型中学校、高等学校、中等教育学校のうち、国際理解教育及び外国語教育を重点的に行うものその他の産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に寄与する人材の育成の必要性に対応するための教育を行うものとして政令で定める基準に適合するもの」としている。一般市町村は対象とせず、都道府県と指定都市が設置する学校に限定し指定する非営利の法人に公立学校の管理を行わせることになる。なお、教育委員会が設置者としての最終的な責任を果たせるよう、教育委員会の一定の関与を確保するとしている。
学校教育は、市民社会の形成において極めて重要なものであり公共的な性格を有する。学校教育法において学校の設置を国、地方公共団体及び学校法人だけに認めているのもそのためである。また、学校運営の継続性・安定性を図る必要から設置者管理主義が採られている。今回の公設民営学校は非営利の法人に公立学校の管理を行わせるものであり、公共性・継続性・安定性の観点から問題がある。学校教育は、安定した学習環境のもとで継続的に提供される必要があり、そこで学んでいる子どもが学習を継続できなくなることはあってはならない。
公設民営学校は、校長をはじめ教職員は非公務員である。現行の公務員制度上の給与体系、任用方法、人事管理とは別に学校独自で勤務条件設定が行われる。教育基本法で、教員は、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられなければならないことが謳われているが、それが確保されなければならない。
国家戦略特区は規制改革を目的とし、新自由主義的構造改革を推進するものである。公設民営学校は、公立学校を通じて提供される公教育のスリム化と成果主義的予算配分による教育格差の拡大につながりかねない新自由主義的教育改革である。
公教育制度は、本来、公費負担によって全国規模で均質な教育を保障するものである。際限のない規制緩和は、公教育制度が有するこの平等性を担保できない危険性があることを指摘したい。
日本教職員組合は、こうした立場に立って法案審議の国会対策を強化していく。